
記者たちは海に向かった 津波と放射能と福島民友新聞 (ノンフィクション単行本)
単行本: 339ページ
出版社: KADOKAWA/角川書店 (2014/3/7)
言語: 日本語
ISBN-10: 4041107342
ISBN-13: 978-4041107348
発売日: 2014/3/7
梱包サイズ: 18.6 x 13.4 x 3 cm
2011年3月11日、一人の新聞記者が死んだ。
福島民友新聞記者、熊田由貴生、享年24。福島県南相馬市で津波の最前線で取材をしていた熊田記者は、自分の命と引きかえに地元の人間の命を救った。
その死は、仲間に衝撃を与えた。それは、ほかの記者たちも同じように津波を撮るべく海に向かい、そして、命の危機に陥っていたからである。なかには目の前で津波に呑まれる人を救うことができなかった記者もいた。
熊田が死んで、俺が生き残った――。熊田記者の「死」は、生き残った記者たちに哀しみと傷痕を残した。それは、「命」というものを深く考えさせ、その意味を問い直す重い課題をそれぞれに突きつけた。
創刊以来、100年を超える歴史を持つ福島民友新聞はこの時、記者を喪っただけでなく、激震とそれに伴う停電、さらには非常用発電機のトラブルで、新聞が発行できない崖っ淵に立たされた。創刊以来の「紙齢(しれい)を欠く」ことは新聞にとって「死」を意味する。ぎりぎりの状況で、凄まじい新聞人たちの闘いが展開された。
さらに地震、津波、放射能汚染という複合災害の現場となった福島県の「浜通り」では、この“三重苦"によって、「読者」も、「新聞記者」も、「販売店」も、すべてが被災者となり、そのエリアから去らざるを得なくなった。
それは、日本の新聞が初めて経験した「新聞エリアの欠落」にほかならなかった。考えられうる最悪の事態の中で、彼ら新聞人はどう闘ったのか。
「震災を、福島を報じなくては――」。取材の最前線でなぜ記者は、死んだのか。そして、その死は、なぜ仲間たちに負い目とトラウマを残したのか。ノンフィクション作家・門田隆将が当事者たちの実名証言で綴る『死の淵を見た男』に次ぐ福島第二弾。「命」とは何か、「新聞」とは何か、を問う魂が震える感動の実話とは――。